ボタニカルライフスタイルブランド「BOTANIST(ボタニスト)」やミニマル美容家電ブランド「SALONIA(サロニア)」等、約19ブランドを展開する株式会社I-neと協業し、2021年11月13日(火)・2021年12月7日(火)の2日間において、「D2C / EC業界の理解と今後のキャリアパス」をテーマに、特別セミナーを共同開催いたしました。
この記事では、本セミナーの第1回目の内容をご紹介いたします。
※第2回目の内容はこちら
http://こちらセミナー概要
第1回目
開催日時:11月30日(火)
テーマ:「D2C / EC事業の業界理解」
第2回目
開催日時:12月7日(火)
テーマ:「D2C / EC業界のキャリアパス」
登壇者:株式会社I-ne 戦略人事部 / 山田 康太氏
株式会社I-ne ECセールス部 / 部長 小松 悠氏
進行:マケキャン byDMM.com 会田
セミナー内容
I-neとは
会田:それでは山田様、小松様、本日は宜しくお願いいたします!
山田氏:宜しくお願いいたします。I-ne人事の山田と申します。
大手メーカーや人材紹介会社、IT企業などで長年人事を担当しています。
2021年の7月にI-neに入社しました。
小松氏:I-neの小松と申します。
現在、ECセールス部にて、オンラインの全体統括をしております。
新卒では株式会社アドウェイズに入社し、単品通販の案件を複数担当しておりました。
その後、より顧客に向き合って課題解決をしたいという思いから2015年にI-neに入社しました。
入社後は単品通販のブランドマネージャーやマーケティングを担当し、現在に至ります。
本日はよろしくお願いいたします。
山田氏:次に簡単にI-neについても紹介します。
I-neは創業15年目、2020年9月にマザーズに上場したビューティーテックカンパニーです。
従業員は今300人ほどです。
「BOTANIST(ボタニスト)」や「SALONIA(サロニア)」など、ビューティ・ヘルス領域を中心に19ブランドを展開しています。
ECの歴史
山田氏:突然ですが、ここにいる皆さんは本日のテーマでもあるD2C※1やEC※2という言葉を聞いたことがありますか?
では、(参加者1)さんいかがでしょうか?
参加者1:そうですね。単語だけは聞いたことがあります。
結構取り組んでいる企業が多い印象で、アパレルやコスメ界隈では特によく聞くように思います。
山田氏:ありがとうございます。
そうですね、直接販売ダイレクトマーケティングと呼ばれたりもするのですが、「Amazon」や「楽天」といったモールを利用し販売しているケース、インフルエンサーやインスタグラマーが直接販売しているケースなどがあります。
本題に入っていく前に、まずはECの歴史についてお話をしたいと思います。
ECが浸透する前、当然人々は店舗で物を売り買いしていました。
当時は店舗が仕入れた物の範囲でしか買い物ができなかったのですが、その仕入れ範囲が徐々に広がることに伴い、「通信販売」という概念が生まれ、それがWEB上に置き変わったという歴史があります。
それからもう1つ、ECサイトの種類についてもお話しできればと思います。
先ほど「Amazon」や「楽天」と表現しましたが、それは「総合モール」といわれるものでtoC向けに商品を幅広く扱っているECサイトを指しています。
その他にも「特化型モール」という種類もあり、例えば「ZOZOTOWN」のようにアパレル等何かに特化したモールを指します。
また、自社商品のみを取り扱う「自社EC」や、「キャンプファイア」や「Makuake」など、クラウドファンティング系も広義ではECサイトと扱う場合があります。
※1:Direct to Consumerの略で「製造者がダイレクトに消費者と取り引きをする」という意味の言葉
※2:Electronic Commerceの略で「インターネット上でモノやサービスを売買すること」全般を指す言葉
山田氏:EC化が進んだメリットとしては大きく以下3つのポイントが挙げられます。
① 流通網の発達で、より遠くの人に商品を届けられるようになった
② OEM※3先の多様化 / 仕入れの簡易化、フリマアプリの台頭等を通じて、欲しい人に商品を届けられるようになった
③ 口コミやレビュー文化の浸透、SNSの発展により、ユーザーの声をダイレクトに聞けるようになった
また、最近のECに関するトレンドキーワードは以下です。
・データ化
・O2O(online to offline)
・サブスクリプション
・ファイナンス
※3:生産を外注できる工場
一つひとつ説明します。
まず「データ化」です。
技術が進歩し、購買データやサイト回遊のログがかなり正確に取れるようになってきました。
通販だとどうしても「購入履歴」しか追えなかったのですが、購買データやサイト回遊データを正確にとることで、「このような商品を見ている人は、最終的に何を買う傾向にあるのか?」に辿り着きやすくなっています。
次に、「O2O」です。
オンラインが普及することによって、「オフラインとオンラインの融合」に注目が集まっています。
アパレルでは、オフラインの店舗で採寸し、商品はオンラインで発送、のように、オンライン・オフラインを上手く融合しています。
次に、「サブスクリプション」です。
「Netflix」や「Amazon prime」のようなものですね。
一定の期間に、一定の金額を課金することで、定期的に商品が届くサービスや使い放題のサービスを表しています。
最後に「クラウドファンディング」です。
企画段階で支援金を集め、目標金額が集まった段階で商品化をスタートし、販売をするといった新しい購入の形です。
メーカーからすると、先に「どれくらいの方が買ってくれそうか?」が分かるため、在庫を抱えるリスクが少なく、また廃棄を出すことがないため、ニッチな領域に手を出しやすいという観点から、流行り始めた手法です。
ということで、「EC化」を一言で表すと「購買行動の多様化」が表現としては近いと考えています。
EC化により人々は場所や時間の制約から解き放たれ、様々な場所や形式で物を買うことができるようになりました。
D2C / EC業界とは?
山田氏:ここからはEC業界の構造ついてお話していきます。
早速ですが、上記の図がざっくりとしたEC業界の構造になります。
左から弊社I-neのようなメーカー、ECの販売戦略を考え運用する広告代理店、実際にモールを運営している企業で成り立っています。
山田氏:では次に、D2C業界の構造についてもお話をしていきます。
D2Cをシンプルに表現すると「直接お客さんとやりとりをして、商品やサービスを販売すること」です。
オンライン・オフラインで変わってくるわけではなく、あくまで、中間業者が介在せずダイレクトに売るという概念を指しています。
D2Cのポイントとして、以下の3点が挙げられます。
① ニッチ※4
万人受けを狙うのではなく、敢えてターゲットを狭く絞ることによってコアなファンを獲得しています。
② パーソナライズ
オフラインとオンラインを融合することにより、ネットで物を買うときには得られなかった高いカスタマイズ性を実現しています。
③ インフルエンサー / ファンマーケ
インフルエンサーなど元々多くのユーザーを囲っている人たちがそのファンをターゲットに販売していくことです。
ただ、実はこういった概念は以前から浸透しています。
ニッチな商圏で事業を展開している会社やパーソナライズしている店舗、インフルエンサーに関しても、人気モデルがプロデュースして認知拡大したブランドなどは昔からありますよね。
※4:規模の小さい市場のこと。狭義には、その中でも商品やサービスの供給・提供が行われていない市場とされ、隙間市場ともいう。
ではD2Cが台頭して改めてなにが変わったのでしょうか。
それは、「作って売るの民主化」です。
つまり「作って売る」を”皆”が簡単にできるようになった、ということです。
例えば、古着を買い付けてきて自分でメルカリで売ってみる。
やろうと思えば誰でも簡単にできるようになりましたよね。
これがD2Cが流行っているポイントなのではないかと考えています。
もう少し具体的に話すと、上記の図は横軸が人気、縦軸が売上を表しています。
今まではそもそも人気がないと売れないので、売上がつくまでに相当な時間がかかりました。
しかし「作って売る」が民主化したことで、それほど人気がなくてもファンが買ってくれると言った新しいマーケットが生まれたというのがD2Cの革新的なポイントです。
「BOTANIST」のマーケティング戦略
山田氏:ではここからは、「BOTANIST」を事例に、「マーケティング戦略」について考えていきます。
ここで小松さんに伺いたいのですが、弊社ブランドである「BOTANIST」も、上記の図のように「急に波がきたぞ!」というタイミングがあったと思います。
考えられる要因は何でしょうか?
小松氏:D2Cという文脈に沿ってお話しますと、先ほど山田が申し上げた通り「消費の多様化」というところが影響として大きいと考えています。
ここだ、というタイミングで特定のセグメンテーション※5に対して適切なコミュニケーションを取ることができたことによって、大手が出がける超大ヒットブランドじゃなくとも、人気を集めることができるようになったんですよね。
BOTANISTは、オンライン販売から始まった商品です。
今でこそドラッグストアの店頭にも並ぶような商品になりましたが、当時は女性向けのシャンプーってオンライン上に中々なかったんですよね。
また、当時店頭に並ぶシャンプーというと、大手メーカーさんのブランドがメインで、パッケージのデザインが華やかなものが多いなかで、 BOTANIST は敢えてシンプルでクリーンなパッケージにすることによって店頭に置いた時に「逆に目を引く」というキャッチーさも話題を呼びました。
オンライン上では機能性を謳う商品が多い中、市場に対して空いているところを戦略的に狙ったことで、「ボタニカル※6ってなんか良さそう」と知名度がどんどん上昇していきました。
大事なことは「消費者をよく見る」ということです。日々生活している中で不快と感じることがあった際に、自分を消費者として捉えて、なんでそう思ったか?と考えることがアイデアの源泉だったりします。
そういう意味では、自分の生活を振り返る習慣を身につけておくとアイデアが生まれやすいと思います。
参加者2:ちなみに、BOTANISTはオンラインからスタートされたと仰っていましたが、オンラインを見てる人にしか働きかけられない中で、どのように知名度を上げていったのでしょうか?
小松氏:知名度を上げるためには、簡単にいうと「人がたくさんいるところで注目される」ということが必要になります。
その状況をオン・オフ問わず作り続けたというのが大きいですね。
オンラインであれば「楽天」や「Amazon」のような人が多く集まる場所をいかに攻略するかがとても重要になります。
その中でも1番注目されている場所はどこか?と考えたときに、総合ランキングで1位を取ると注目が集まることが分かったんですね。
そこで、楽天のランキングを攻略したというのは勝因として大きかったと思います。
オフラインであれば、ドラッグストアに行かない人って男女問わずほとんどいないので、とてもシンプルですが、良い棚を確保するであったり、オフラインでのプロモーションを展開するであったり、とにかくオフラインでの露出を高め続けることが重要です。
それで置いてくれる店舗が増えてくると「うちにも置きたい」という店舗が増えて、最終的に認知が上がってきたというところになるかと思います。
参加者3:セグメンテーションが大事という話がありましたが、BOTANISTはどのようにターゲットを選定していったのでしょうか?
小松氏:そうですね、BOTANISTの場合は元々レッドオーシャン※7のシェアを取りにいくということを考えていたので、セグメンテーションはあまり行いませんでした。
ただ、「こういうコンセプトでこういうコミュニケーションをとれば、他の会社との差別化ができて当たる可能性が高いね」という具合に綿密なコミュニケーション設計を徹底して行っていました。
一般的には、薄毛だったり白髪に悩んでいる人だったり、人それぞれの課題に対してプロダクト(商品やサービス)で解決できるように設定し、ターゲットや訴求内容を決めていくことが多いですね。
※5:市場細分化の意味で、特定商品における市場を異質とみなし、顧客市場を細分化することによって特定カテゴリに対して集中的にアプローチすることを目的に行われる。
※6:化粧品・美容品の分野においては「植物由来成分を配合している」という意味で使われる
※7:競争の激しい市場や業界
D2C / EC業界でのキャリアパス
山田氏:ここからは、今までお話してきたD2C / EC業界でのキャリアや職種について、I-neのケースを踏まえてお話していきたいと思います。
まずは職種に関してですが、大きく「ECマーケター」と「ダイレクトマーケター」という2つの職種があり、それぞれご説明させていただければと思います。
ECマーケターと呼ばれている人たちは、上の図で言う青い部分「代理店・ECコンサル」に当たります。モールのコンサルティングを行う人やメーカーとの間に入ってECの運用する人をECマーケターということが多いです。
もっと平たく言うと「ECで物を売るプロモーションのスペシャリスト」というイメージです。
どのように運用すれば物が売れるのか、ということを考え、販促企画を立てることが彼らの仕事です。
もう少し細かいことを言うと、実際にはECマーケターの中でも職種が複数分かれていて、運用実務を担当する方もいれば、もう少し企画よりの方もいます。
また、モール店長と呼ばれるAmazonや楽天の中でのI-neの売り上げを最大化するような人もいれば、SKU※8と言う商品の売り上げ最大化を担っている人もいて、その会社や商材によって少しずつ役割や立ち位置が変わってきます。
もう一つがダイレクトマーケターという職種です。
商品企画→販売計画→集客までのECサイトの経営全部の戦略を担うのがダイレクトマーケターです。
では、実際にI-neはどうなのか?と言うところなのですが、小松が率いるECセールス部の組織図がこちらになっています。
大きく、サブスクリプション課とキープラットフォーム課という、2つの課に分かれています。
キープラットフォーム課がECマーケターの所属するチームとなっていて、その下でさらにモール別にチームに分かれてくるような体制です。
サブスクリプション課というのは、単品リピート商品を企画を担うチームになります。
先ほどECマーケター・ダイレクトマーケターと大きく2つの職種がある、と言うお話をしましたが、I-neではどちらも経験することが可能です。
私たちは、IPTOSというフレームワークを独自で開発していて、こちらに則って商品開発を行っています。
IPTOSは、Idea, Plan, Test, Online/offline, Scaleの頭文字をとっていて、商品企画から販売スケールまでのフェーズを細かく分け、それぞれにKPIを設けることでリスクを最小限に抑えた形でたくさんの挑戦ができると言う体制をとっています。
また、下記3つに当てはまる方は向いてると考えています。
1つ目は、商品 / サービスにより近いところで働きたい方
代理店にいるとサービスがユーザーに届くと言う瞬間までを見届けられなかったり、無形商材だとエンジニアが作っていて最終的な手触り感が分からなかったりするのですが、我々は有形商材であり、かつ自社商品を自らの手でユーザーに届けられるという意味で、やりがいや実感を持って働けるのではないかと思っています。
2つ目は、とにかく圧倒的に成長したい方
EC業界のトレンドは非常に変わりやすいため、「この業界に長くいればいるほど偉い」と言う方程式が良い意味で成立しない業界です。
裏を返すとそれは若い人にも上に上がっていくチャンスが大いにあると言うことかと思います。
また弊社はまだまだベンチャーなので、上のポジションが詰まり切っていないと言う意味でも成長のチャンスが大きいと思っています。
3つ目は、D2Cブランドでいつか起業してみたいという方
確かな実績のある環境で経験を積みナレッジやノウハウを貯められると思っています。
得た知識をもって起業初期のマーケティングをご自身が担うことでマーケティングコストを大きく抑えることもできるのではないかと思います。
ということで、第1回目の内容は以上となります!
来週の第2回目は、実際にI-neを例に出しながら「どうすればECに関わるマーケターになれるのか?」ということについてお話しできればと思っております。
会田:山田様・小松様本日はありがとうございました!次週もよろしくお願いいたします!
※8:ストック・キーピング・ユニットの略語で、在庫管理上の最小の品目数を数える単位